JOURNAL

Coats for the Winter Days



コートはキャプテン サンシャインの姿勢を
最も顕著に表すカテゴリーのひとつだ。
膨⼤なアーカイブや古着に触れる中で得てきた知⾒から⽣まれ、
様々な⼈の⽣活様式に寄り添い、
実際に着てはアップデートを繰り返しながら
途絶えさせずつくり続けてゆく。
その象徴たる3つのモデルの個性と、
そこに児島晋輔がデザイナーとして込めた想いについて。

Traveller Coat ¥143,000


アウトパッチの大型ポケットとそこに添えられたチェンジポケットのような小型の収納、チンフラップ付きの襟を備えたコートは旅の道中や渡航先での実用性を追求した末に生まれたデザイン。極細のウール繊維を使った二重織りのメルトン生地はなめらかでも分厚く丈夫で、身頃には裏地を設けず端をパイピングで処理することで着心地に軽さも持たせている。「キャプテン サンシャインの中では比較的コンパクトなシルエット。このコートはほとんど素材も変えず、ずっと続けています。秋冬の海外出張には必ず持って行く一着です」。
※以下、「」内はすべて児島晋輔の⾔葉。








キャプテン サンシャインがコートを発表したのは2013年の秋冬のこと。ブランドを設⽴した春夏に続く、2回⽬のコレクションだった。

「昔からコートが好きで、いろんな国や年代のものを集めていました。今も⾯⽩いものがないかとずっと探していますけど、そうやって⻑くコートをつくり続けているブランドのアーカイブから⾃分なりに勉強しているつもりです」。

最初に完成したモデルは“トラベラーコート”。10年以上が経った現在まで、微調整を行いながらも途切れずリリースしている定番だ。
キャプテン サンシャインでは現在も数名のパタンナーが得意分野に合わせて辣腕を振るってくれているが、このコートが⽣まれた背景には、設⽴当初に携わっていたひとりのベテランパタンナーの存在が⼤きく関わっている。

「その⽅は⻑年イタリアにいらっしゃって、そこから帰国後に⽇本のトラッドの礎を築いたブランドに⻑く籍を置かれていたんです。コートの熱⼼なコレクターでもあったその先生とはよく古着のコート談義をしていたんですが、あるときにそれぞれが持ち寄ったのが両⽅とも偶然、旅⽤のコートだったんです」。


キャプテン サンシャインを立ち上げる直前の児島がそのとき手にしていたのはアメリカンヴィンテージの一着で、トラベラーコートの特徴的なアウトパッチのポケットは主にそこに由来する。一方で、その熟練パタンナーが持ってきたのは戦前の日本のピース。おそらく彼にも劣らないであろう洒落者だった、旅好きの父親があつらえたという一点ものだった。

そこから、ただ装うためや寒さをしのぐためだけではなく、様々な都市や街を訪ねてまわる都市⽣活者のワードローブとしてのコートの開発が始まった。

「単純に⾃分⾃⾝がコートが好きだということもありますが、こうやってコートという服のいろんな側⾯を掘っていくうちに、⾃然と⾃分のブランドでも重要なアイテムになっていきました」。

Walker Coat ¥330,000


2020年の登場以来、キャプテン サンシャインの秋冬のスタンダードとなったバルマカーンコート。ゆったりとしたAラインで、蹴廻し(裾周り)を大きく採ったパターンは足さばきの良さと、自然で上品ななびき方が楽しめる。襟はやや小さめで、立てて着た際には肩傾斜を強めた前振りのラグランスリーブにかけて美しいラインが生まれるよう設計されている。今季はカシミヤと、カシミヤ並みに繊維が細い15ミクロンの上質ウールを50%ずつで交織したダブルメルトン仕立て。
「自分が持っていたフランス製のコートがリファレンスで、名前もそれにちなんでいます。これまでのウォーカーコートで一番厚手ですが、仕上げにブラッシュされた生地はやわらかくてなめらかなカシミヤらしさがよく出ています」。








一口にコートと言ってもタフなミリタリーパーカやヘビーデューティなワークコートからビスポークまで、児島晋輔の関心の対象は幅広いが、自身のものづくりでは上質な素材や狂いのない縫製など、仕立てのよさが大切なキーワードとなる。自分が多くの服を見てきた中で、時代を超えても魅力を失わず、⻑く愛せる多くの服に共通するのがそんな個性だったからだ。もちろんパターンの追求は当初から今もなお続いている。⻘山にあるキャプテン サンシャインの旗艦店で使われているコートハンガーは、なで肩になった特注品。児島が好きな襟を立てたコートの首周りの表情が伝わるようにと設計されたものだ。

「スタイルとしてはいろんなコートが好きです。でも、特に素材の良さにはやっぱり惹かれることが多くて、キャプテン サンシャインではできるだけ良い原料を使って、生地からオリジナルでつくるようにしています。アーカイブを研究して忠実につくる人たちにはすごく敬意があるけれど、それをやるのは自分らしくないし、古いものから何を学んでファッションとして新しいものをつくるのかという編集具合が僕の仕事の肝だと思っています」。

Umbrella Coat ¥187,000


キャプテン サンシャインの定番の中でも最もボリュームのあるロングコートは、児島がロンドンで見つけたʼ50年代のアーカイブに着想を得て生まれたもの。袖の中心線に接ぎの入ったラグランスリーブや、やや前下がりの襟など、随所にゆるやかな丸みを帯びたシルエット。アルパカとウールを使い二重織りにした生地は製品になる前の段階で洗いと起毛とを繰り返した縮絨加工によるもの。原料の縮率のわずかな違いによる凹凸が生まれることで、まるでヴィンテージのような立体感と風合いをたずさえている。
「元になったコートとの出会いも⼿伝って、傘をあまり差さないイギリス⼈が⼤きいコートで⾬を凌いでいるような、そんなイメージでつくりました。重⼼が低めのデザインは、不思議とどんな⼈が着てもはまります。やれた古着なんかにも、よく合うと思います」。






そうして着る人のライフスタイルやシチュエーションをイメージしながら、キャプテンサンシャインでは定番と呼べるコートを少しずつ増やしていった。そのコレクションのムードによって素材やカラーウェイなどの提案は行いながらも、基本は変えずに。現在は、原点となるトラベラーコートを担当したパタンナーは惜しまれながらも高齢を理由に引退し、彼とともに⻑年ものづくりを行ってきた人物がその後を引き継いですべてのコートを手がけている。

「結局好きなものって、時間が経っても変わらないんです。だから、こだわってつくって納得したものができたなら、例えあまり売れない時期があったとしても続けたいなって、そう思っています」。


Photograph_Asuka Ito
Styling_KAPTAIN SUNSHINE
Edit & Text_Rui Konno
Production_Ryo Komuta[Rhino inc.]

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