素朴さとエレガンスが両立した充実のリアルクローズ。
秋冬シーズンに続き、Barbour(バブアー)とのコラボレーションモデルが春夏仕様に装いを変えて登場する。昨年、デザイナーの児島晋輔とイギリスチームとの間で行われた充実したセッションの成果が窺える、コラボレーションならではのプロダクトが完成した。
2型、3色というバリエーションで展開される今回のモデルの最大の特徴は、レイヤードができるように2つのアイテムにて構成されていることだ。児島はプロダクトの成り立ちについてこう語る。
「Barbourの本社ではさまざまな資料を拝見することができたのですが、もともと漁師や船乗り、港湾労働者など、海辺の厳しい労働環境で働く方々に向けて作られた防寒・防水具だったわけで、そういった資料がたくさん残されていたんです。ローデンクロス(※オーストリアのチロル地方の伝統的な防寒素材)のアウターの上にBarbourを羽織ったり、Barbourのオイルドクロスにウールのコートを重ねたり。あらゆるパターンでレイヤードを駆使した彼らの着こなしが頭のなかに残っていて、今回はそれを形にしてみました」。
※以下、「」内はすべて児島晋輔の⾔葉。
コートの上に重ねたナイロンブルゾンは、名作「BEDALE(ビデイル)」をアレンジしたもの。下に着ているコットンライクなアウターと素材のニュアンスが異なるために、レイヤードすることでほどよいアクセントが生まれる。
Endurance Jacket ¥79,200 LIGHT OLIVE
Transport Smock ¥61,600 DARK INDIGO
もう一型は、ロングショアマンのアーカイブモデルを参考にデザインしたという、アノラック調のモデルだ。「プルオーバーは好きでよく着ていますし、作ってもいるのですが、いつかはBarbourでやってみたいと思っていて長年温めていた企画です。軽快な感じに落とし込みたかったので、春夏シーズンがぴったりかなと思って今回作ってみました」。
レイヤードしたナイロンアイテムは、袖のないベスト仕様。シンプルになりがちな夏のTシャツスタイルに合わせるのもいい。「ナイロンのアイテム単体でも着られるというアイデアは、本国のチームにも気に入ってもらえたみたいです。前回のコラボレーションではフード部分に色を入れたんですけど、それも喜んでもらえて。こうしたデザイン要素はインラインにはないものなので、新鮮だったのかもしれません。自分もコラボレーションということで、インラインではやらないことを意識しています」。
なるべくシンプルにと引き算で構成されるKAPTAIN SUNSHINEのインラインコレクションと、組む相手の特徴を最大限に引き出すべく、足し算で作られるコラボレーションの違いである。
「自分が愛用している90年代のBarbourの名作を、現代の日常着として、また梅雨時のコートとして街で着て欲しかったのでロング丈のコートへとデザインアレンジしました。素材にはBarbourが新たに開発したハイブリッドなライトウエイトコットンクロスを使っています」。
日常的に着るためのリアルクローズとして制作された、今回の企画。そのうえで、Barbourが持っているディテールを過不足なく正しく活かしている。「コートの後ろにはアクションプリーツを入れていますし、アノラックはサイドがかなりの高さまで開くようになっています。脱着のしやすさや、物の取り出しやすさなどを実現すべく開発されたディテールです。ファッション目線で見ても素敵なんですが、あくまで実用的な用途に応じた形状なんですよね。僕がBarbourに惹かれるのはそういうところなんです」。
Transport Smock ¥61,600 OATMEAL
男性被服における“UN FASHION”という概念は、切っても切れないものとして、常に傍にあるものだ。ファッション目的ではない生まれたプロダクトにこそ宿る、ファッション的な色気やムード。こうしたパラドクスを解決する一つの手段が、もともと“UN FASHION”であったプロダクトの力を借りるというものだ。
編集力こそが自身のデザインのキモだと語る児島が、今回の企画で具現化したプロダクトは、そうしたセンシティブな部分を注意深く扱うことで生まれた。元来Barbourに備わっている素朴さを活かしたうえで、イギリスの歴史や文化の鼓動を、今日的な日常着に落とし込む。結果、時代の変化によって風化することのない、強度のあるプロダクトに仕上がった。
Photograph_Keita Goto [W]
Styling_KAPTAIN SUNSHINE
Edit & Text_Ryo Komuta [Rhino inc.]